水路

生活、まれに音楽

都内某所

「███のユニットとしての性質は、名前が示すとおり、若さに依るものが大きいと思うんだけどさ、その若さって青春とかまだ未熟さからくる元気、純真無垢を内混ぜにしたものでしょ。実際、小学〜高校生の頃なんて毎日楽しければオッケーくらいのノリで過ごしてたじゃない?大半の人は受験を経て大学に入り、ようやく将来について考え始めるわけで。

だから彼女は、███で一番 "時間" や "今しかできないこと" に意識的なんじゃないかって思うんだよね。他のメンバーはまだ子供かってくらい若い。でも、彼女は置かれた立場……大財閥の令嬢、大学生、ユニット内最高齢とかその他諸々を考えると、夢を見ていられる時間がもう少しで終わる。
そんな中、アイドルを通して彼女がどう変わっていくのかすごく気になってて、」
「あ、えーっと、柔らかたまごのペペロンチーノと、季節の野菜パスタで。ドリンクはアイスコーヒーを2つお願いします」
「ねぇ私の話聞いてた?」



電車を降りて改札を通る。長い地下道を抜け階段を上ると、地上に出た。暑い。日本の夏は人が外を歩くには暑すぎる。
昼食を買うためコンビニへ。店に入ると、素早く惣菜を掴んで列に並ぶ。昼時、しかも正午を回ったばかりということもあって混んでいた。
「WAO!WAO!」
汗ばんだシャツが冷たい。冷房の風が容赦なく体温を奪っていく。奥のレジで客らしき老人と店員が揉めていた。会計を済ませ店を出る。寒さから逃れたと思いきや、外は暑い。もう無茶苦茶だ。歩道橋を渡り建物に入る。エレベーターホールの埃臭さにホッと一息。