水路

生活、まれに音楽

生活

予想図設計者

「最近いいことありましたか?」「特には」「そうですか」「何?」いつまでもこのままでいたいと願うのは簡単。でも時は常に流れているし、それを止める術も知らない。もし同じ場所に留まり続けたとしても周囲は否応無しに変化する。それはもう「このまま」…

200m先のT字路を直進してください

ひとつのイベントが終わった。達成感を得た。それに付随して予想外のハプニングが起きた。悲しいというよりむしろ嬉しいものだった。気持ちが弾んだ。しかし爆弾を首に巻いた、というか巻かれた。息がしづらい。ミスを犯した。さらに息苦しくなった。背後を…

年年

眠いと思った数秒後には目が覚めるし、疲れた途端元気になって、外出したい気持ちと布団に篭りたい気持ちが同居しており、視界はキラキラしつつ泥まみれ、虚しさ、満足、焦燥、平穏。思考があらゆる直線上を忙しなく行ったり来たりしている。言葉は壁に当た…

ねじれの位置

太陽がさ、優しくしてくれるから勘違いしちゃったよ、まだ5時にもなってないじゃないか。そうやって好き勝手甘やかして、いつの間にかまた自分から遠ざかっていくんでしょう?まったく嫌になっちゃう。でもまぁ、あと少しその優しさに甘えていたいな。もう2…

ネオン

都会の夜、交差点で信号待ちしている車から漏れ聞こえるクラブミュージックと、オフィスビルの隙間に覗く月。隣で若い女の子たちが誰が誰と付き合ってるとか、週末はどこに行こうかとか他愛のない話をしている。暑くも寒くもないこの時期、少し季節が迷子に…

柔らかい帝国

車に轢かれて死んだネコは、自分を轢いて殺した人ではなく、そのあと2度目に轢いた人を呪うらしい。正午を知らせるチャイム。日付と噛み合わぬ気温の高さは、春を通り越してもう夏だ。待機中という言葉が似合う。何かに没頭したいのに緊張感がそれを妨げる。…

双六でいうなら

調子に乗った結果、ここ数年間で積み上げたものが崩れた。いや、崩したというべきか。また最初からやり直し。一度降りた山を再び登るのは大変だ。その辛さを既に知っているので尚更。幸せより不幸でいるほうが生の実感を得やすい。苦しみに悶える自分を背後…

都内某所

「███のユニットとしての性質は、名前が示すとおり、若さに依るものが大きいと思うんだけどさ、その若さって青春とかまだ未熟さからくる元気、純真無垢を内混ぜにしたものでしょ。実際、小学〜高校生の頃なんて毎日楽しければオッケーくらいのノリで過ごして…

眠れないまま朝が来る

まるでブレーキのない車に乗っているような日々。全速力でカーブへ突入し、車体を壁に擦り付けながら無理やり曲がる。火花が散る。サイドミラーはとうの昔に折れて行方不明。傷つけたくないならアクセルを踏まなければいい、しかし止まったままでは後続車の…

When We Were Younger And Better

犬が死ぬ夢、市外の焼却場、シャッターを下ろした商店街、掠れた落書き、電線の烏、上京して標準語を話すようになった友人、口にすべきでなかった言葉たち、紙に空欄が3つ、4つ思い出や記憶は霧の向こうへ行ってしまい、今では揺れる輪郭を目でなぞるばかり…

後日談

ブラックサンダーがKinKi Kidsとコラボしてブルーサンダーになる夢を見た。今日は何味だったっけ。おそらくキャラメルポップコーン。またはチーズ風味のお菓子。1つの地獄が終わった。自らの怠惰により若干伸びたが、なんとか泳ぎきって浜辺に転がる。太陽が…

昨日、君を見た

ここ1ヶ月くらい味を感じない。香りに体が慣れてしまったのだろうか。チーズケーキ、クッキー、ポップコーン……みんな霧の向こうへ消えた。教室のドアを開けると、すでに沢山の生徒がいた。空いている席に座る。今日は高校入学初日。もういくつかグループがで…

無題

「そうですか、名残惜しいけど仕方ないですね‬」居酒屋に入る。ジョッキのビールと鳥の唐揚げ。いつも通りの注文だ。「ご両親には伝えてあるんですか?」いや、と答える。ビールに口をつけてから乾杯がまだだったことを思い出す。「伝えるわけないよ、止めら…

無題

引っ越すたびに、住む部屋の階を上げていく女の子がいた。まずはアパートの1階、次に2階、3階といった具合に。理由を尋ねた。風景が良いとか、単なる偶然とかそういう返事を期待して。「高い階に住めばいつでも飛び降りられるでしょう」予想外の答え。黙る僕…

無題

「半径10km以内異常なし」待機所から連絡が入る。よし、あとは帰るだけだ。「朝早かったから疲れたわ」「演習まで時間あるしそれまで少し寝たら?」同僚のやりとりを聞きながら海を走る。頬を撫でる水飛沫が心地よい。お腹が空いた。昼ご飯は何にしよう?い…

青い靴

今日は食べ物ではなく風景だった。冷たく澄んだ新潟の山々。民宿の主が亡くなって久しい。彼の飼っていた金魚はどうなったんだろうか。浴びるように酒を飲んで床に就いた。目覚めれば午前5時。焦燥感を煙草で紛らわせながら朝を待つ。 ここではないどこかへ…

唐宮駅 2番ホーム

聴き慣れない言葉、ふらつく女性、扉が開いてこちらを一瞥、電光掲示板に遅延の文字列、エンジン、徐々に上がる回転数、汗と香水の混じった臭い、橋を渡る光、月のない空、日本語と英語のアナウンス、その繰り返し、笑う若者、サラリーマンの隣は空席、転が…

通学路に陽炎

チャーハンから上る湯気を見ている。ため息1つ。なんとも落ち着かない。町内放送「██地区にお住まいの███さんが、今日の午前10時頃家を出たきり行方不明になっています。(視界にモヤ)身長は170センチ、体格は普通。服装は紺のジャケットにベージュの長ズボン…

ナンバープレート

精神的にだいぶ厳しいイベントがあったため███を一気飲みして臨んだ。なんとか乗り切った。心を覆っていたモヤモヤが一気に晴れて、今は少しの眠気と心地良さだけが残っている。銀杏並木を歩く。道は黄色く染まっている。落ち葉の山を蹴り上げた。秋は去りも…

無題

高校時代を振り返る。空っぽの日々だった。クラスの隅で息を潜める生活をおくっていたわけではない。休み時間に談笑する同級生はいたし、部活をやっていたから先輩や後輩もいた。しかし、深い仲になった人は一人を除いていない。そしてその人とも卒業を機に…

無題

短い物語を読んだ。登場人物が入水自殺をした。いわゆるバッドエンドだった。実生活が空っぽな分、小説なり映画に触れるとひどく感銘を受けて、数日間はそちらへ気持ちが引っ張られてしまう。少し前の話。ある日、早めに出勤して、就業時間まで事務所の裏で…

臨界点に花が咲く

たまには贅沢を、と買ったパックの寿司がとても不味かった。虚しさが募る。これならいつも通りカップラーメンでよかったんじゃないかと後悔した。電車に乗ったら寝てしまい、終点で降りることになった。せっかくなので駅を出てぶらついてみる。大きなロータ…

現在地不明 2

今日の天気は白かった。夕方、買い物に行った。日用品売り場で知人を見かけたが、話しかけなかった。適当な石鹸と歯ブラシを買い物カゴへ放り込む。レジの傍に置かれたカロリーメイトを買う。店を出て箱を開け、一口齧った。プレーンなので味はしない。帰り…

現在地不明

線路に沿って歩く。こちらに気づいた野良猫が道路を横切り柵の下に消えていった。今日はいつも以上に空気が厚い、踏み出すたびに抵抗を感じる。水中で暮らすのが魚なら、陸の生物は水蒸気に包まれ生活している。そこに大きな差はない。立ち止まる。喉が開い…

マレーシア

散歩中いつもの交差点を曲がらず直進した。空き地で子どもたちが走りまわる、その向こうには親とおぼしき女性が2人。1人はサンバイザーをかぶり、もう片方はアームカバーをつけていた。信号を待っていると、コンクリートに黒いシミを見つけた。ここにも、あ…

No.25

コンビニのレジに並んでいると、後ろから話し声が聞こえてきた。「ここのコンビニ、昼間にめっちゃ使えない店員がいるんだって」イヤホンの音量を上げる。心が荒むから人の悪口はなるべく耳にしたくない。しかし思い当たる節がないわけではなかった。以前こ…

激熱冷やし中華

週末、実家に帰った。ここ数年は年末や盆になるたび、忙しくて帰れないと実家に連絡するのが常態化していた。金曜日の夕方、仕事を終えたその足で新幹線に乗る。久しく会っていなかったが、両親は昔のままであった。もっと前から知らせてくれればご馳走でき…

3秒後に忘れた世界

Twitterで流れてきたコスプレイヤーの顔が変わっていた。以前見たときと鼻の形が違う。だからどうしたというわけでもないけど。火傷をした。冷やさずにいたら水ぶくれができた。周囲の毛が焦げて縮れているのも含めて面白い。海にいた。まだ朝なのに暑かった…

21グラムの行方

早朝、散歩をしていたら、道でカラスが死んでいた。まだ息絶えて間もないのか、虫も湧いていない。目がビー玉みたいで綺麗だった。珍しいものに出くわしたことで上がるテンションと、死んだ生き物を前に浮かれるのはどうかという気持ちがないまぜになったま…

射的

夏なのにそれらしいことをひとつもしていないと気づき、花火大会へ行くことにした。夕暮れ、家を出て駅へ向かう。駅のホームは、やはり花火を見に行くであろう若者や親子連れでごった返していた。浴衣や甚兵衛を着ている人もチラホラいる。電車を降り、群衆…