水路

生活、まれに音楽

柔らかい帝国

車に轢かれて死んだネコは、自分を轢いて殺した人ではなく、そのあと2度目に轢いた人を呪うらしい。



正午を知らせるチャイム。日付と噛み合わぬ気温の高さは、春を通り越してもう夏だ。
待機中という言葉が似合う。何かに没頭したいのに緊張感がそれを妨げる。手元のケータイは通知をオンにして充電器の上。「鳴るな」と祈りながら机に突っ伏している。微睡みと不安がせめぎ合っている。時計を見たくない、時が進むのが怖いから。


安息の延長を持て余し夜の住人になって早1ヶ月。何らの抑圧から解放されて、今日も良い天気だなんて惚けている。今こそが、求めていた日々だと気づいた。でもしばらくすればまた嵐のような日常がやってきて、心を潰し体力を奪っていく。せめてそれまではこの平穏に浸かっていたい。